『10年後の私』

神戸で学会があるので,それに便乗して2日間だけ帰省している。
部屋のあちこちをあさっていたら,おそらく高校入学時に書かされたであろう作文が,机の中から出てきた。課題は『10年後の私』。109HR12番。15歳。10年前。

私の夢は、「稼いで稼いで使って使う」事です。
今、私は恐ろしい程倹約の生活を送っています。それは、お金を使うことに抵抗があるからです。小遣いという形でもらっているとはいえ、両親が働いて得たお金です。だから、いつもちゅうちょしてしまうのです。
自分で得た金なら、それがありません。むしろ使ってすっきりします。
(中略)
この計画を成功させて、最初に書いた様な生活を送りたいです。そして今お世話になっている人に楽をさせたいです。

…昔から気の毒な子だったんだなあ。
何が面白いって,どうも当時の自分は「この計画」とやらを成功させて大金持ちになる計画があったみたいなんだけど,その予定が2020年なのだ。つまり『10年後の私』のことについて,なーんも書いてないのである。
いや,最後に「この計画」って出てくるんだからそれまでに記述があるはずだろうって?そんなことはないのだ。本文にはこうある。

…とりあえず二〇二〇年に実行しようと思っているので、それまでは下準備に励みます。悪いことではありません。しかし、成功すれば大変なことになります。内容は書きません。しばらくは誰にも教えないと昨年の夏に決めたからです。…

おーい,その本人が覚えてないから,お前の計画とやらは闇の中ですぞー。まあ要するに,今の生活は準備期間なわけだ。何かに向けての。何だろうね。当時の日記に何か手がかりがあるんじゃないかと思ってそれも探したんだけど,どうやら諸事情により焼却された時期にあたるらしい。書いた俺も俺だが,燃やした俺も俺だ。まったく,どうにかしてほしい。
10年前の自分に教えてやりたい。10年後のお前はな,医学部にも行かず(注射がダメだもんね),法学部にも行かず(結局文転せずじまいだったよ),就職なんかせずに大学に居残って(そういう人生もあるって知ってた?),成り行きで免許取った薬剤師のバイトで稼いだ小銭を右から左へ良かれと思って散財して,分不相応だとか言って怒られてるんだよ。まあ,良いと思うけどね。お前の夢は叶ってるよ。桁は全然違うけどさ。頑張って桁増やそうな。