ナショナルギャラリー・学会4日目

学会5日目の朝,ついに最低気温が氷点下を突破した。華氏温度で考えている彼らにとって氷点下というものがどのくらいの衝撃を持っているのかいまいち分からなかったけれど,ニュースを見る限り20°F台と30°F台ではやはり大きな感覚の違いがあるらしい。
昨日は14時頃までものすごく忙しくて,そのあとは特に見るべきものがなかったので,ナショナルギャラリーに行ってきた。2時間少々ではとてもじゃないけれど全部回るなんて不可能だから,標的を絞って挑んだ。
個人的に何としても見たかったのは,ラ・トゥール『悔い改めるマグダラのマリア』と,モネ『日傘をさす女』。これらそれぞれを数十分ずつ眺めたかったのだけれど,あまりに見るべきものが多すぎて,結局誘惑には勝てず,隅から隅まで見て回ることにした。ダ・ヴィンチ,リッピ,ルーベンスエル・グレコレンブラントフェルメール,マネ,モネ,ルノワールセザンヌドガゴーギャン,スーラ……まで辿り着いて,時間が足りなくなった。
自分は展示室の角を曲がって作品が目に入る瞬間のあの感じ,何というか,邂逅?の衝撃が好きなので,パンフレットを見て歩くことはしない。だから少なくとも,次の角を曲がったところに何々がある,とまではいかないまでも,何か素晴らしい作品があるかもしれない,という漠然とした覚悟は持っているのだけれど,それでもラ・トゥールとモネは……凄かった。
モネは……逆光と風になびくヴェールによって隠された,秘められた朧気な女性の表情,面影。ドレスの裾は右から左へ,ヴェールは左から右へなびいており,そこから示唆される風の舞い踊る様子が,爽やかな自然の中で捉えられた瞬間的な印象性を見事に表現している。展示の位置が絶妙で,ちょうど女性が草原の上手から見下ろすようになっていて,鑑賞者と視線を交わせるようになっているのだ。ここで15分は立ち止まっていたと思う。
名残を惜しみつつ,ガイドブックと絵葉書を買って出てきた。またD.C.に来る機会があれば,ナショナルギャラリーのために丸一日費やそうと心に決めた。
そうそう,館内で高校の同級生に遭遇した。D.C.にいるということはSfNに来ているのだろう,という暗黙の了解がその瞬間に生まれたから,まるで近所のスーパーで出くわしたときのようなやりとりをして別れたのだけれど,その様子を見ていた同期たちにひどく驚かれた。
「今の誰?」
「高校の同級生」
「えええええ!そんな,さらっと!!!」
……みたいな。そう言われてから,じわじわ驚きがやってきた。
夜はDupont circleの近くでイタリアン。ピザがmediumとlargeの2種類で,How large?って聞いたらちょうど3人分だ,と言ってくる。But I guess it's too much for us Japaneseとか言ってもNo problemの一点張りだから,挑戦の意味も込めてlargeを注文すると,やっぱり座布団みたいなのが出てきた。こっちは俺と女の子2人なんだから,どう考えても無理だろう……と思っていたけれどこれが存外に美味しくて,結局俺がほとんど食べ尽くしてしまった。
さて,そろそろポスターを見てこよう。