発表多すぎ

ちょっと休憩。
昨日,今日と2日連続で文献紹介の担当だった。その準備のせいで,木曜から金曜にかけて36時間連続出勤。もうどうにもシャワーが浴びたくて仕方なくて,顔ばかり洗って何とか乗り切った。
Deletion of TrkB in adult progenitors alters newborn neuron integration into hippocampal circuits and increases anxiety-like behavior
Roles of continuous neurogenesis in the structural and functional integrity of the adult forebrain
どちらもadult neurogenesisの仕事で,かなりテクニカルなマウスを使用している。
PNAS論文では,直前に出たNeuron論文と少し重複する内容なのだけれど,CreER/loxPで時期特異的にTrkBを落として,細胞レベルと行動レベルで解析している。GFAPやNestinではなく,GLASTプロモーターの下流にCreERを挿入しているのが新しい。歯状回で成熟する新生顆粒細胞の減少,dendriteの成長阻害,オープンフィールドでの不安様行動が観察された。
よく知られているように,adult neurogenesisとdepressionの関係は散々議論されていて,薬物やirradiationによって細胞新生を阻害した場合の行動試験はいくつも行われている。しかし,それだけで行動に影響が出た例はなかった(はず)。脱落を起こす効率という点ではirradiationが最強なので,ただ新生細胞が減少したことではなく,TrkBを欠損した新生細胞が既存の神経回路に統合されたことが理由……という解釈で良いのだろうか。
NN論文では,Nestinプロモーターの下流にCreERを挿入したマウスと,新生細胞を標識したい場合はRosa26の領域loxP-STOP-loxP-CFPを,除去したい場合はNSEの下流にloxP-STOP-loxP-IRES-DTA1を,それぞれ挿入されたマウスとかけあわせている。特に後者が面白くて,まず前駆細胞でCreER/loxPによりSTOPが外れ,それが神経細胞に分化した場合だけ,NSEと同時にDTA1(ジフテリア毒素)が発現する……という,ぴたごらスイッチのような仕組みになっている。これらのマウスを使用して,嗅球と歯状回を観察することで,部位によって新生細胞の統合様式が異なること,また空間記憶が新生細胞に依存していることを示した。
さすがうちの研究室というべきか,海馬の扱いにはとても厳しいので,あちこちから批判が飛んできて大変だった。たしかにこの論文は,歯状回について厳密に追究しているとは言えないかもしれない。細胞数あるいは密度の増減だけで新生細胞の統合様式を議論するのは,これだけ細かい制御ができるようになった現在では,少し粗いのではないかと思う。今後はよりミクロな視点で統合様式の解明が進むことだろう。
次の発表は2日後,英研報。これさえ乗り切ればアメリカだ。