ノープランサイクリング

昼過ぎに目が覚めて,そのままだとベッドの上で体育座りしてるうちに一日が終わりそうだったので,簡単に支度をして家を出た。最初はジュンク堂で本を何冊か見繕って帰ってこようと思っていたのだけれど,雑司ヶ谷霊園の脇に差し掛かったところで気が変わった。
以下は写真が続くので,少し重くなるかもしれない。そのときの気分に合わせて,露光量やらオフセットやらカラーバランスやら,あれこれ弄っている。自分の限界とコンパクトデジカメの限界に挑戦してみた。

雑司ヶ谷霊園を突っ切って,しばらく走ったところで見つけた神社。名前を確認するのを忘れていたのだけれど,写真から判別するに,威光稲荷堂というらしい。地図で確認したところ,通ったような通ってないような,変な場所にあった。

そのすぐ近くにあった寺。先ほどの神社が威光稲荷堂で間違いないのなら,こちらは法明寺…で正しいようだ。山門を少し離れて見たところ。

ふらふらしていると,鬼子母神に辿り着いた。今夜は盆踊大会らしく,出店が準備を始めていた。焼きそばを作って食べていたおばさんに「もう買えます?」と聞いてみると,自分の分だけその場で作ってくれた。しかも普通の値段で超大盛り!境内の片隅で食べていると,何だか涙が出てきた。うまいんだよ,ちくしょー。

その勢いで,近くの出店からラムネを買った。自分でプシュッとやりたかったのに,「ちょ,自分でやりm…」という制止も虚しく,気を利かせたお姉さんが栓を抜いてしまった。栓を抜かれたラムネって,皮を剥かれた甘栗くらい価値が落ちると思う。飲みながら写真を取るのは難しかった。

鬼子母神の境内にある,武芳稲荷堂に続く鳥居。椎名林檎『歌舞伎町の女王』のPVに登場する赤い鳥居といえば,分かるだろうか。自分もその場に立った段階では自信が無かったのだけれど,調べてみるとやはりそうらしい。iPodを全曲ランダム再生していたのだけれど,この鳥居に差し掛かった瞬間『迷彩』が流れてきて,ゾクッとした。そういうものなのだろうと思い,そこから椎名林檎だけを再生することにした。

大公孫樹(おおいちょう),樹齢約600年らしい。

西参道から見ると,鬼子母神堂の裏手に妙見堂という建物があった。

鈴なりになっている絵馬。

明治通り目白通りが立体交差しているところに出た。この橋は千登世橋といって,貴重なものらしい。そこから遠くを眺めていると,都電荒川線がやってきた。今日だけで何度車両を見たか分からない。

千登世橋のすぐ脇から,目白台を一気に下る坂。調べてみると,のぞき坂という名前がついているらしい。一度自動車で下ったことがあるけれど,坂に差し掛かった瞬間,ジェットコースターのファーストドロップのような恐怖感があったのを覚えている。恐らく明治通りの混雑を避ける抜け道として利用されているのだろう,自分が坂にいる間にタクシーが数台そろそろと下っていった。坂の先には新宿副都心を臨む。

神田川と併走していて見つけた場所。とても東京23区内だとは思えないような,水のせせらぎが聞こえた。

胸突坂というらしい。その名の通り,それくらい急で苦しいということだろう。23区内には同名の坂がいくつかあるそうだ。
そのまま走り続けると,椿山荘の裏手に出た。つまり,自宅から直接来れば5分とかからない場所まで,数時間かけて辿り着いたことになる。それに気付いた途端,自分のノープランサイクリングがとても小さな営みだったように思えてきて,子どもの頃に戻ったような好奇心も薄まって,少し悲しくなった。しかしそんなつまらないことを考えても仕方ないと思い,気を取り直して,改めて都電荒川線早稲田駅を目指すことにした。

早稲田大学を経由して,西早稲田に出た。水稲荷神社というところに立ち寄ると,隣接して甘泉園という日本庭園があった。この神社も夏祭りが近いらしく,出店の準備が始まっていた。

一応の終点,早稲田駅。ちょうど電車が入ってきたところだった。
あまり遠出はしていないけれど,総走行距離は結構な数字になったんじゃないだろうか。街を見て,空を見て,人を見て,ペダルを踏んで,少し気が楽になった。明日も自転車で家を出よう,浅草に行こう。