キック・アス

ヒューマンフロントシネマ有楽町にて。

デイブ(アーロン・ジョンソン)はスーパーヒーローに憧れるあまり,ネットで買ったダサいスーツを着込んで自警団ごっこを始める。当然弱っちいデイブはボコボコにされて病院送り。でも全身に金属が入ったのと神経が麻痺したおかげでやたら打たれ強くなってしまい,活動を続けているうちに「キック・アス」の動画がYouTubeで有名になってしまう。そんなデイブの一方で,ガチガチに鍛え上げた本物のコスチュームヒーロー親子,ビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ)とヒット・ガール(クロエ・グレース・モレッツ)が暗躍していた。マフィアのシマに乗り込んじゃったデイブをヒット・ガールが助けて売人たちを全滅させたことで,それをキック・アスの仕業だと勘違いしたマフィアが彼を捜し始めた…。
ハリウッドにおける一大分野であるところのスーパーヒーローもの。過去5年間くらいで映画化されたものをパッと思い出してみても,スーパーマンスパイダーマン,アイアンマンやバットマン,X-メン,ウォッチメンファンタスティック・フォー,あとハルクやヘルボーイも,とにかく枚挙にいとまがない。作品中でもそんなスーパーヒーローものへのオマージュがたびたび出てくるのだ。個人的にはヒット・ガールに助けて欲しいときのサインの出し方でワロタ。「市長に頼んででっかいち○こマークを空に映せ」って何やねん,これがホントのバットマン…って実際にそういうセリフなんですよ。それを撮影当時11歳の女の子が言ってるんですよ!
いや,もう,ヒット・ガールだけでこの映画を見る価値はあるよ。特に終盤のアクション!空中で二丁拳銃をリロードするのとか,マジで痺れたわ。親父が途中でジョン・ウー云々言ってたけど,それもあっての二丁拳銃なんですかね。見てるときは『リベリオン』思い出してたけど。あと親父から誕生日プレゼントにバタフライナイフもらったときにニコニコしながらカチャカチャしてんのも可愛かった。ちなみにヒット・ガール役のクロエちゃん,就寝時間は午後9時半で,おうちでは "ass" なんて口が裂けても言えないから "Kick-Butt" と言ってたそうです。可愛いのう。YouTubeでいくつかインタビュー見たけど,12,3歳とは思えないくらいしっかりしてらっしゃる。
一方で,不満…は言い過ぎだけど,気になるところもありまして。最後に主人公の身辺が思春期童貞の成長物語的な路線に回収されちゃうの,引っかかるんだよなあ。だってこれは正義を愛する心の持ち主にまつわる美談でも何でもなくって,憧れが高じて一線を越えちゃった危ないオタクの話なんだから。「どうしてみんなパリス・ヒルトンにはなりたがるのにスーパーヒーローになろうとする奴はいないんだ?」(デイブ談)って,そりゃそんなのマトモじゃないからですよ。だって終盤のガトリングとかバズーカとか,いや見てるこっちも超スッキリしたけど,よくよく考えると武器のレベルが二丁トンファーから一気に上がりすぎだろ。一歩間違えればアメコミ版『タクシードライバー』なんですよ。そういう意味ではヒット・ガールの役どころは『タクシードライバー』でいうジョディ・フォスターとか『レオン』でいうナタリー・ポートマンに近いのかな。強弱関係が丸っきり反対だけど。
というわけで,制作されるらしい続編では是非,その辺を存分に歪ませて,ギリギリまで行って欲しいですな。R18でも構わんよ。いやあ,それにしても大満足だわ。